インデックス運用の一環としてのロボアドバイザー運用は、特に資産運用初心者にとっては有効な方法だと思っています。
一方で、デメリットがあることも事実で、そのデメリットをもとに「ロボアドバイザーはやめたほうがいい」「ロボアドバイザーを勧めない理由」「ロボアドバイザーはぼったくり」といった、ネガティブな意見もたくさんあります。
そういう意見は実際に、投資を考える際の重要なポイントをついていることもあるので、しっかり受け止めて、自分で考える必要があると思います。
というわけで、ウェブやSNSでよく語られている、「ロボアドバイザーを始めるべきではない理由」を集めて、自分なりの考えをまとめてみましたので、参考にしてください。
手数料が高い
まずどの批判においても語られるのが、基本1%という手数料の高さです。
それぞれいろいろな割引制度を設けていますが、「投資一任型」のウェルスナビのようなサービスでは、どれだけ安くなっても、3,000万円以上運用して0.5%というのが最安レベルです。。
ロボアドバイザー比較「ウェルスナビ」vs「THEO+docomo」。割引手数料がお得なのは。。。
これがなぜ高いかというと、そういったロボアドバイザーが投資している金融商品というのは、個人でも証券会社で購入できるインデックスファンドやETFで、自分で買えばその手数料は0.1%前後のものが多いからです。
つまり、ロボアドバイザーに1%払うぐらいなら、自分で同じ組み合わせの投資信託やETFを買えばいい、ということになります。
これは確かにその通りで、ある程度金融リテラシーのある人であれば、そのようにすれば問題ないと思います。
ただ、誰もが金融知識に興味が高いわけではなく、またそのために割ける時間が限られている人もいます。そういう人が、自分では設計できないポートフォリオを組んでもらい、随時資産バランスの見直しをしてリスク管理をし、税金最適化を行ってもらう、ということを考えると、1%の価値がまったくないとも、言い切れないのではないかと思います。
また、僕のようにいろいろな金融商品を試しているような人にとっても、ロボアドバイザーがどのような運用をするのか、ということは一つのベンチマークとしては非常に興味があります。
サービスに対する対価が高い、という批判とは別の視点で、同業他社に対して高い、という批判もありました。
この場合の同業他社というのは、アメリカのロボアドバイザーが対象にあげられています。例えばアメリカのWealthfrontというロボアドバイザーの会社は、手数料が0.25%となっています。

この会社のロボアドバイザーは、単に運用するだけでなく、緊急時の現金を確保したり、支払い口座を管理したりと、すべての資産を一括で管理してくれるサービスのようです。
それでいて、手数料が日本の4分の1ですから、それと比較してウェルスナビやTHEOの手数料が高いというのは、的を得ていると思います。
これに関しては、より競争が激しくなることで、ウェルスナビもTHEOも一層の効率化をすすめて、今後の手数料の値下がりに期待するばかりです。
サービスの内容が大したことない
これはまあ、手数料が高い、というのとほぼ等しい内容なのですね。ウェルスナビやTHEOで投資している金融商品というのは、素人では手が出せないような複雑なものでも、機関投資家でないと購入できないような特別な商品でもありません。
誰でも買える、どこの証券会社でも買える、低額からでも買える、という非常にハードルの低いETFです。しかも手数料も間違いなく1%以下。
このようなリスクの異なるETFを様々に組み合わせることによって、ローリスクローリターンから、ハイリスクハイリターンまで5つぐらいのパターンを作って、ユーザーが選んだそのパターンに合わせたETFの売買しているのが、ロボアドバイザーです。
それを「世界の富裕層と同等の」「AIが運用する」「ノーベル賞理論に基づいた」などというややきらびやかな言葉で宣伝しているのは、売るためのマーケティングが過ぎていると言われるかもしれません。
しかしやはり、手数料と同じ理屈ですが、金融初心者がいきなり、自分に最適なポートフォリオを組めますか?中途半端な知識や感情に惑わされずに、適切なリバランスができますか?そもそも、年に1回のリバランス、思い出せますか?
ロボアドバイザーと同じ資産運用をするということは、単に銘柄を買うということだけではないと思っています。
例えばですが、誰でもスーパーに行って肉や野菜や調味料を買うことはできます。しかしそれを適切な栄養価に基づいて組み合わせ、長期的な健康を維持するために日々中身を見直す、ということは、それなりに経験のあるプロでなければ難しいでしょう。ある程度のお金を払ってでも、そんなサービスを受けたいという人がいるのは、妥当なことだと思います。
NISAでの税制優遇が受けられない
これは確かに、大きなデメリットかもしれません。もしNISA口座で運用できていれば、運用益に対する約20%の課税がゼロになります。
資産運用を志すもの、税金を極力払わない、手数料を極力下げる、ということは、投資の鉄則であり、運用収益に大きくかかわってきます。
この点は、ウェルスナビでも当初から認識されていたと思いますが、2021年になって「おまかせNISA」という形で、NISAによる非課税枠を利用することができるようになりました。
これ、他の証券会社にすでにNISA口座を持っている人は、それを廃止しない限り使えないのですが、そういう意味でも、まだNISA口座を作っていない資産運用初心者には、うってつけですね。
「おまかせNISA」という名前ですが、使うのは一般NISAで、投資枠は年間120万円ですから、枠としては十分ではないでしょうか。

当然、競合のTHEOも追随してくると思われるので、近い将来には、一任型ロボアドバイザーはNISA対応がスタンダードになると思います。
キャッシュポジションが持てない
これは、ロボアドバイザー口座の中でキャッシュ=現金を保有することができないから、使えない(使いにくい)、という批判です。
例えば証券会社であれば、株式や投資信託も保有しながら、その口座内に現金を保有することができます。一方ロボアドバイザーでは、入金した現金はすべて金融商品の購入に充てられます。(実際には端数の現金は残りますが)
そうすると、含み益が出た時に現金化しようとすると、ロボアドバイザー口座そのものから出金しなくてはならないことになります。
もっと言えば、現金と投資商品の比率を、ロボアドバイザーの中でコントロールできないということになります。
まあ、ロボアドバイザーで現金も含めて全資産のポートフォリオを組もうと思ったら、そりゃそうでしょうが、そんな人いますかね。
ロボアドバイザーに委ねる資金というのは、基本的に運用したいものだと思うので、現金のバランスを増やしたければ、出金すればいいのではないかと思ってしまいます。
代表的なインデックスよりパフォーマンスが悪い
もしこれが、事実だとしたら、それはロボアドバイザーを始めるべきではない最大の理由になると思います。
パフォーマンスが悪くなる理由の一つとして、株価の下落局面でも、ロボアドバイザーは投資し続ける、というのがあります。
「落ちるナイフをつかむな」という投資の格言があるのですが、これは、株価の急落局面では買いに走らず、株価が底打ちするのを待て、というものです。
こういう場合でも、ロボアドバイザーには投資を続けるというオプションしかないので、下がり続ける株式でも保有し、買い続けます。
この結果として、代表的なインデックスよりもパフォーマンスが悪いという批判がされているのを見たことがありますが、これはちょっと疑問です。
長期資産運用を志す者の鉄則は、長期・分散・積み立てです。下落局面というのは、は仕入単価を引き下げ、長期的により大きな利益を得るために重要な局面だと思うのです。
ここで短期的に、市場平均よりパフォーマンスが悪いと判断するのは、積み立ての効果や長期投資の醍醐味をどぶに捨てているようなものではないでしょうかね。
この点については、自分のロボアドバイザーでの運用成績を見ながら、判断していきたいと思います。
金融リテラシーが高まらない
ロボアドバイザーに投資を一任して、ほったらかしにしているということは、結局自分が何に投資をしているのか把握しなくなる、という可能性もあります。
いくらノーベル賞理論に基づいたAIに運用を任せていても、 それが必ず正しいとは言い切れません。なので、自分で何に投資をしているのかを把握していないということは、自分の資産の運用の仕方としては、問題があると思います。
投資を開始した時点と状況が変わっているにもかかわらず、運用方針を変えないでいると、リスクの高すぎる投資をしている、ということにもなりかねません。
なのでこの「ほったらかし」というのは、確かに良くないことだと思います。このことを考えて、僕もこのブログのタイトルを変更しました。(以前は「ロボアドバイザーほったらかし資産運用レポート」というタイトルにしていました)
ほったらかしにする、というのは、何に投資をしているかも知らないでいるという意味ではなく、市場の騰落にかかわらず、資産の上下に日々気を取られずに、運用をしていく、という意味で重要なことだと思っています。
まとめ
ロボアドバイザーに対しては、いろいろな批判があって、中にはその通りだと思うものもあります。
ただ、すべての人に必ず当てはまる圧倒的なデメリットというのは、ほぼないのではないかと思いました。
つまり、ある一定の条件を満たした人であれば、ロボアドバイザーで資産運用をすることは決して悪い選択ではない、ということです。
実体験がないので詳しくは書けませんが、銀行や証券会社の営業が売りつけてくるラップファンドや投資信託には、とんでもない手数料をとるものがあると聞きます。また、そのようなものを何回も買い替えさせて、手数料を稼いでいるということも聞きます。
そのような公然と行われている詐欺のような金融商品の売買に比べると、ロボアドバイザーによる運用ははるかに有用性が高く、長期的には運用効果を期待できる手法ではないかと、考えます。
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