インデックス運用の効用を説いた「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)という本を参考にして、心がけておきたいマインドセットをまとめてみました。
「投資の「ドリームチーム」を買う」
インデックスファンドがどういうものかを、端的に言い表したのがこの「ドリームチーム」という言葉かなと思います。
金融市場に参加しているプレーヤーというのは、機関投資家と呼ばれる銀行、保険会社、信託会社、年金基金などが大半を占めます。このような機関投資家は、超一流と言われるアナリストやファンドマネジャーの投資判断をもとに、資金の投資先を決めています。
そうして形成される株価というのは、つまりは資産運用のプロ中のプロが適正と判断したところに、落ち着いていきます。つまり、投資の「ドリームチーム」が決定した株価の総合体が、日経平均やS&P500といった指数になっているわけですね。
だから、これを出し抜いて、市場インデックスより高いパフォーマンスを出そうとすることは、「ドリームチーム」に個人が勝とうとするようなものです。
もちろんそれが不可能だというわけではないと思います。実際に小型株集中投資で大きく資産を増やしている人もいます。ただそれは、かなり限られた数の成功者なのではないか、という気もします。チャールズ・エリスはこう言っています。
インデックス・ファンドを使えば、「ドリーム・チーム」のスタッフを抱えるのと同じメリットが得られるだけではない。安心感も一つの大きなメリットである。個人投資家は、常に不安に駆られている。これは鳥越苦労である・しかも、インデックス・ファンドは手数料も安く、税率も低く、運営コストも安い。
「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)p51-p52
「『 稲妻が輝く瞬間 』をとらえることはできるか」
「安い時に買って、高い時に売りたい」とは誰もが思うことでしょう。
この「稲妻が輝く瞬間」というのは、金融商品を「買う(売る)べき最善のタイミング」のことです。これが実に、稲妻が輝くほど一瞬しかないということです。
「敗者のゲーム」では次のようなデータを引いて、稲妻が輝く瞬間をとらえることの難しさを説いています。
過去75年という長期間で見た場合、株式リターンのほとんど大部分は、上昇率ベストの60か月間にーーこの900か月という長期間のわずか7%--達成されているという。
「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)p30-p31
(中略)
1989年6月30日にS&P500に1ドル投資した場合、その後1999年6月30日までの10年間でベストの90日を逃がしたら、22セントの損が出ていたはずだという。(中略)(ちなみに、ワーストの90日を回避していたら10年で42ドル78セントの利益が出たはずである)。
つまり、このような、リターンを最大化(ロスを最小化)するようなタイミングを都合よくとらえることは、非常に難しいので、長期投資家が考えるべきことは、株価が上がろうが下がろうが、常に市場にい続けること、株価に合わせて売買を繰り返すのを避けること、ということになります。
「今日の天気で気候がわかるか」
インデックス運用は、短期で資産を倍増させるような投資方法ではありません。投資期間は少なくとも10年以上を想定して、期間の通算で年率5%以上の成長を目指します。(人によりますが)
そのためには、「直近の経験を重視しすぎない」ことが重要です。「敗者のゲーム」ではこのような分かりやすい例で説明されています。
毎日の「天気」と「気候」は別物である。「天気」は短期的な現象、「気候」は長期的な現象を指す。この違いは重要である。気候のよい場所に住みたいと思った場合、先週の天気だけを参考にしても無意味である。同様に、長期的投資を行うときに、一時的なマーケットの上下に振り回されてはならない。
「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)p41-p42
インデックス投資家は、日々のマーケットの動きに振り回されてはいけませんね。
日々の株価の上下は、毎日の天気のようなものだと思えばいいのです。晴れの日もあれば、雨の日もある、曇りの日も嵐の日も、暑い日も寒い日もあります。しかし今日晴れているからと言って、毎日晴れると思う人はいません。今日寒いからと言って、永遠に寒いと思う人もいません。
同じように、今日株価が上がったからと言って、これからもずっと上がると喜んだり、今日株価が下がったからと言って、これからも下がり続けると悲観する必要は、ないのです。
ついつい、日々の株価の動きを追って一喜一憂しがちですが、それに振り回されないようにしたいものです。
「牛を買うとしたらどう判断する?」
天気の次は「牛」ときました。
牛というのは金融商品のことと考えてください。その牛が定期的に「配当」というミルクをうみだすのです。
ちょうどミルクのために牛を買い、卵のために鶏を買うように、現在および将来の配当のために株式を買うのである。もしあなたが農場を経営しているのであれば、牛を買うとき、あなたの投資からより多くのミルクが取れるように、なるべく安く買いたいと思うだろう。
「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)p175-p176
ここでは何を言っているかというと、株価が下がった時もコツコツと買い続けようということです。そうすると「あなたにとって本当に有利なのは、奇妙なことではあるが株価が大きく値下がりし、低迷を続けることである」ということになります。
同じ配当をうみだす銘柄であれば、安く買えるに越したことはないわけですね。
チャールズ・エリスはこのように警告しています。
あなたは群集心理に巻き込まれて、株価が上がったときに飛びついて買い、下がったときに慌てて売るといった誘惑に打ち勝てるように、自分自身を訓練していかねばならない。
「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)p177
まとめ
インデックスファンドを買い始めたのに、運用益がマイナスになっている、とか、ロボアドバイザー投資を始めたのに、全然資産が増えない、という人がいるかもしれません。
そういうときに、ここにあるマインドセットを思い出すと、落ち着いていられるのではないでしょうか。
「敗者のゲーム」はインデックスファンドの効用を分かりやすく説いた名著、と言われます。(あまり読みやすいとは思えないですが)
ここで挙げたマインドセットについては、この本の中で特に僕が意識しておこうと思ったポイントです。このほかにも有用な知識や考え方が書いてありますので、読んでみることをおすすめします。
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